「権力は腐敗する。絶対権力は絶対に腐敗する」。世界の長期独裁政権を見ていると、この言葉が当てはまる。
アフリカのチュニジアで1月に起きた「ジャスミン革命」に端を発したアラブの民衆革命は、エジプトに飛び火。「アラブの盟主」を自任し、30年間にわたって独裁的な政権を維持してきたムバラク政権を崩壊させた。
ムバラク大統領は、体制維持のために警察力と情報統制という手法で、最後まで権力にしがみつこうとした。しかし、「即時辞任」を求める民衆のデモ鎮圧に失敗した。独裁権力者には自分の姿が見えなくなるのだろう。政権打倒には、ツイッターなどのインターネットメディアが力を発揮した。経済や情報のグローバル化の中で、ネット社会を象徴する出来事の一つといえる。
国境を越えた投資が活発になり、貧富の格差が広がって庶民の生活は苦しくなるばかり。強権体制下での政府の汚職や腐敗、そして言論統制。民衆の不満は沸点に達していたのだろう。たまたま1年前、エジプトを訪れて、ピラミッドやスフィンクスを見た。カイロ市内に宿泊し、レストランで食事をした程度だが、なぜかよどんだ空気を感じた。
新聞の解説でおやっと思ったのは、アラブ諸国では「人口爆発」がおきているということだ。今回の政変の担い手は、教育レベルの高い年の若者だった。「少子高齢化」が進む日本とは対照的である。こうした若者のデモは、日本では最近見たことがない。長期独裁政権も問題だが、1年交代のようにくるくると首相が代わる日本の政治も困りものである。
ムバラク政権崩壊後のエジプトが今後どうなるのか、不安定な政権の長期化を懸念する声は当然のごとくある。アラブ諸国にはバーレーン、ヨルダン、イエメン、アルジェリアといった長期政権にも「民主化の波」が押し寄せるだろう。このドミノ倒しのような政変を遠くから一番心配しているのは、日本のお隣の「金王朝」かもしれない。 |