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株式会社 廣文館
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コラム・ブックレビュー
広島在住のコラムニストによる “社会時評”コーナー! 月1回のペースで「読むことの楽しさ」をお届けします。

鬱うつと

今年は、例年より早く入梅した。雨がじとじと降り続き、蒸し暑い日は不快指数が高くなる。それでなくても、東日本大震災の災害復旧が遅々として進まず、福島原発の収束も見通しが立たない状況。「もやもや」「鬱々」とした気分になってしまう。

「5月病」というのがある。新入生や新入社員が新しい環境になじめず、鬱々とした状態になることを指す。さしずめ、「日本全体が5月病に覆われているみたい」と言っていいかもしれない。

とりわけ、福島原発はまだ現在進行形である。1号機だけでなく、2号機、3号機も震災後間もないうちに「メルトダウン」していたのが、二カ月以上たって東京電力が認める体たらくだ。放射性物質がどのくらい漏れ出して、これから先どれくらいの被害が出るのか、さっぱり分からない。「不安」と「不信」ばかりがどんどん広がっている。

政治といえば、野党側から菅首相の不信任案が提出されそうな情勢。身内の民主党からも造反が出るかもしれない、とゴタゴタしている。「与野党で争っている場合ではない」という声。「菅首相を代えて震災復興をしたほうがいい」という声。どちらにしても、日本の大ピンチに国民の信頼できるリーダーがいないという不幸を味わっている。

毎日、ニュースを見ていると鬱々としてくる。かといって、不平や不満を言っていてもらちは明かない。大震災という大変な危機を、「世の中を見直すチャンス」ととらえる発想の転換が求められているのだろう。

人類は自然の営みに対して、奢ってはいなかったか。謙虚さが足りなかったのではないか。もっと自然を畏れ、いたわり、対話をしながら生きていくべきではないか。「電気」という文明に頼りすぎている私たちの生活を、見直そう。物質や金に仕えた生活を見直そう…そんな神の声が聞こえてきそうだ。鬱々とするのをやめて、新しいものを見出そう。

【午睡/2011.5.31】


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