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広島在住のコラムニストによる “社会時評”コーナー! 月1回のペースで「読むことの楽しさ」をお届けします。

《いのちの林檎》

 文明の発達とは、一方で環境汚染の歴史でもある。ドキュメンタリー映画「いのちの林檎」を観ながら、そんな思いを強くした。現在進行中の福島原発による放射線汚染はその最たるものだろう。この映画で描かれている「化学物質過敏症」も環境汚染がもたらした悲劇の一つである。

農薬や排気ガスなどに反応し、呼吸困難や昏睡、転倒、電磁波過敏などを起こす化学物質過敏症は、全国で70万人とも90万人ともいわれている。その中でも早苗さんは、最も重症な患者である。百メートル先のタバコにも呼吸困難になり、近所のゴルフ場の農薬散布で息ができなくなる。

そんな過酷な状態にある早苗さんは、母と2人で呼吸ができる場所を探して車で旅に出る。たどり着いたのは、標高千メートル地点でのテント生活。臼で小麦をひき、うどんやパンを作って食べる。その日常をカメラは克明に追っている。

早苗さんが水も飲めなくなり、命の危機に瀕したとき、命を救ってくれたのは現代医学ではない。青森の林檎農家、木村秋則さんが17年の苦闘の末に実らせた無肥料・無農薬の林檎だった。文字通り「いのちの林檎」である。早苗さんも木村さんも壮絶な人生だ。その姿を何年がかりで追いかけ、映像に収めている。

実は、監督の藤澤勇夫さんと製作の馬場民子さんは、時折酒を酌み交わす古くからの友人である。日ごろはテレビ番組のドキュメンタリー作品を主な仕事にしている。その2人が、2時間にも及ぶ骨太な作品を作ったことに心から敬意を表したい。

ただ、いくら素晴らしいものでも、自主制作映画はなかなか公開できる機会や場所がない。何とか馬場さんの故郷、呉市で上映会を開くことができ、続いて広島市でも上映された。これからも、自主的な上映会を開いていくための苦労が続く。

多くの人たちに、化学物質過敏症の実態を知ってほしい。そのためにも、1人でも多くの人にこの映画を観てもらいたい。

【午睡/2011.8.26】


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