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株式会社 廣文館
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コラム・ブックレビュー
広島在住のコラムニストによる “社会時評”コーナー! 月1回のペースで「読むことの楽しさ」をお届けします。

《さくらと温泉》

いつもより遅れて咲いた桜の花が散った。といっても、広島地方の平地の話である。桜前線は北上中。ちょっと山間部に足を延ばせば、まだ花を楽しむことができる。

今月15日の日曜日、友人と広島市湯来町のしだれ桜を見に出かけた。樹齢80年、高さ18bの大木。ちょうど見ごろだった。ぽかぽか陽気もあって、駐車場は満杯。弁当を広げて花をめでる花見客でにぎわった。

大きなカメラバッグをかついだ友人は、三脚を立てて1時間半ほどいろんな角度から撮影していた。周囲の緑を背景に、青空に大きく手を広げたような薄いピンク色の花びら。友人が撮影している間、花に見とれながらボーっと酔いしれた。これぞ至福のときといえる。

しだれ桜の周辺には、ソメイヨシノも満開だった。花に堪能してから、近くの湯ノ山温泉に行く。入浴料350円の素朴な銭湯。湯船につかると、体が解き放たれたようにリラックスする。外に出て、打たせ水を浴びると肩のこりが治った感じである。

さくらに温泉、なかなか贅沢な昼下がりだ。しばし、浮世を忘れるひとときだった。これに花見酒といけば天国だろう。

 それにしても、浮世の方はままならぬ。東日本大震災の復興は遅々として進まない。原発は再稼動するかどうかで迷走している。消費税増税をめぐって政治はごたごたが続く。野田政権はアップアップだ。お隣の北朝鮮はミサイル打ち上げを強行したあげく失敗。再び核実験をもくろむのか。危なっかしい金正恩体制の先は見えない。

 東北地方はこれから桜の季節になる。2月の沖縄から始まり、5月の北海道まで桜前線を追っかける「日本列島桜旅」。毎年この時期になると、時間もカネもないくせに、そんな旅を夢見る。

【午睡/2012.4.16】


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