お盆を過ぎると、朝晩は涼しくなるのが普通である。だが、ここ最近は厳しい残暑がいつまでも続く感じである。8月下旬になったのに、朝早くカッと日差しが照りつける。日本列島の各地で「猛暑日」のニュースが報じられている。
この夏の真っ盛りに、ロンドンオリンピックがあったのも、暑さに輪をかけたように思える。日本とロンドンの時差8時間。ナデシコジャパンのサッカーを始め、熱戦が真夜中とあって、睡眠不足が続いた。暑さと寝不足が重なって、時々めまいがする。熱中症にかかっているのだろうか。
19日の銀座で、オリンピックメダリストの凱旋パレードがあった。50万人の観衆が、大歓声を上げる姿をテレビで見ていると、オリンピックの名場面がよみがえってきた。
アメリカに惜敗したナデシコジャパンの決勝戦は、片時も目が離せなかった。銅メダルを獲得した女子バレーボールの試合も胸が熱くなった。愛ちゃんと佳純ちゃんががんばった卓球、メダルラッシュの競泳、体操、重量挙げ、レスリング、ボクシング、フェンシング、アーチェリー、バドミントン…。メダル獲得の陰にはさまざまなドラマがあるものだ。
その中でも、三連覇がかかった百、二百平泳ぎでメダルが取れなかった北島康介選手の顔が目に浮かぶ。敗者なのに、いや敗者だからこそだろうか、重荷がとれたようなさわやかな表情だった。そして、「康介さんを手ぶらで返すわけにはいかない」と同僚が北島に銀メダルをプレゼントした四百メートルメドレーリレーは、本当に見せてくれた。
競馬の武豊騎手は、「一番目指しているレースは?」と聞かれると、「圧倒的な一番人気の馬で勝つこと」と答える。私は最初、人気薄の馬で大穴を開けるような勝利とかと思った。だが、が天才騎手、一番人気の重圧を乗り越えての勝利に価値を置くというのだ。これぞ王道である。
今回の金メダリストの中では、内村航平選手がそれに当たる。世界選手権で個人総合3連覇。勝って当然と目される重圧をはねのけたその精神力に、惜しみない拍手を送りたい。
オリンピックの話になると、ついつい熱を帯びてしまう。五輪の残暑かもしれない。一方、国内政治の方は、五輪熱でどこかに追いやられていたと思ったら、領土問題に火がついた。竹島と尖閣諸島。どちらも日本の固有の領土としながらも、韓国が実効支配中の竹島には李大統領が上陸するパフォーマンス。日本が実効支配している尖閣諸島には、香港の活動家が上陸して逮捕、強制送還のドタバタ。領土問題はそれぞれのお国の事情がからむので難しい。
国境をめぐる争いに確固たる意思を示せない野田政権。「弱腰外交」の批判も浴びているが、国内政治の方がそれどころではない、というのが実情か。消費税増税案の成立に向けた正念場。解散総選挙もからんで「秋の陣」が待っている。残暑の後が思いやられる。
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