リーダー待望論があるようだ。確かに、日本の政界は頼りないリーダーが目に付く。解散総選挙を約束したという「近いうちに」の言葉をめぐって、与野党のリーダーが言い争っている。その政争を見せつけられると、「強いリーダー」がほしくなるのもわかるような気がする。
政権交代はしたけれど、民主党政権に多くの国民が失望した。ならば、自民党政権に戻ってほしいか、というとそれもしっくりしない。そこで、第三極の勢力が注目されている。橋下徹大阪市長が率いる日本維新の会と石原慎太郎前都知事を中心にした石原新党だ。橋下、石原両氏に共通するのは、右寄りで過激な言葉を吐く独裁的な言動がそれなりの人気を博している。
いわゆる「強いリーダー」である。ものごとを決められない現政権に対し、言いたい放題を言う両氏に「スカッ」とするのだろう。カリスマリーダーが現れて、えいやーとすべての問題を解決してくれたら、こんなにありがたいことはない。現実にはそんな人はいない。
一橋大の米倉誠一郎教授は「今は1人のカリスマリーダーで物事が解決できる時代ではない」という。「カリスマリーダー願望は危険だ」ともいう。確かに、立派な人が現れて、任せてしまえば簡単だろう。情報を集めて判断したりしなくていいからだ。ついていけばいいのだから。そして、「必要なのはカリスマリーダーではなくてプロフェッショナルなリーダーだ」という。北朝鮮やアラブの独裁国をみれば、強権的なリーダーのいる国がどんなものかが分かるのではないか。
閉塞感の漂う世の中になると、橋下氏や石原氏のようなスパッとものを言う人が頼もしく見える。小泉純一郎元首相も同じことがいえる。ワンフレーズのキャッチフレーズに乗せられて、気がつけば日本は格差社会に陥っていた。それでも、小泉元首相はよかったと思っている国民は多い。だまされたことに今でも気づいていないのだから。
アジテーターの資質はこの3人には備わっている。言葉の裏側にある本質を見抜かなければならない。
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