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コラム・ブックレビュー
広島在住のコラムニストによる “社会時評”コーナー! 月1回のペースで「読むことの楽しさ」をお届けします。

《2012年の瀬》

2012年はどんな年だったのだろう。毎年、この時期になると、1年を振り返って思いをめぐらす。

師走総選挙で民主党が惨敗、自民党が圧勝して安倍政権ができたばかり。3年前の総選挙とまったく逆の形になった。まるでオセロゲームを見ているような気持ちになった。一言でいえば「カオス(混沌)の時代」ということだろうか。なんだか、昨年の年の瀬も同じようなことを言った感じである。これからは、カオスの時代がずっと続くのではないだろうか。

師走選挙で気になったのは、多くの政治家たちが経済成長の達成を公約に掲げていたことである。成長に必要なのは、国民の消費支出である。だが、各家庭は物であふれかえっている。これ以上、何を買わそうというのだろうか。

欲望は果てしない。その欲望を満たす成長路線を続けていたら、いずれ地球は壊れてしまうだろう。人口が減少している日本は、成熟社会である。大量生産・大量消費の社会から、物を大事にする社会へ転換していくべきではないのか。つまり、成長至上主義から脱成長へと舵を切らなければならない時である。脱原発もその一環であろう。

経済成長のために国債という借金をさらに増やしていけば、財政赤字で破綻したギリシャと同じ道を歩むのは目に見えている。ところが、自民党政権に戻ったとたんに、民主党政権が唱えていた脱原発は、原発推進に変わっていきそうだ。

「もったいない」という言葉が少し前に見直されたが、また「経済成長」の名の下に、ないがしろになっていきそうだ。「足るを知る」という言葉がある。

静かに、穏やかに、質素に生きたい。カオスの時代に、そんなことを思いながら年の瀬を迎えている。よいお年を。

【午睡/2012.12.29】


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