前回、三寒四温と書いた。あらから1ヵ月。全国各地から桜の開花宣言が聞かれるようになった。春である。
サクラの時期、春霞がよくかかる。だが、最近はちょっと事情が違う。どんよりと黄色がかった大気に覆われる日が多い。そう、黄砂現象である。中国大陸から偏西風に乗ってやってくる。雨になると、車が薄黄色に汚れてしまう。
そして、更に厄介なのはPM2・5である。もちろん午後2時半という意味ではない。Particulate Materの頭文字で、微小粒子物質と訳される。中国の大気汚染は深刻だ。その汚染物質がPM2・5で、黄砂と一緒に日本まで押し寄せている。ぜんそくや気管支炎などへの悪影響が心配される。
もう6年前になるが、10日間ほど中国を旅した。その時すでに北京空港はどんよりと霞がかかったようになっていた。大気汚染とすぐ分かった。急激な高度成長による工場の排煙や自動車の排気ガスが原因である。数年間でさらにそれが進んでいると推察される。
思い起こせば、日本も40年前は同じような状況があった。高度成長時代の工業化に伴う工場排煙や排水、車の排ガスで都市の環境は悪化していた。公害問題が追及され、「四日市ぜんそく」の言葉も生まれた。光化学スモッグが日常的に発生して、子どもたちが校庭でばたばた倒れたりしてニュースにもなった。
だが、日本は公害を克服して、空気や海の汚れは次第にきれいになった。中国は、GNPが世界二位になった大国だ。しかし、現実はかつての日本のように公害が深刻だ。これを克服しない限り本当の大国とはいえない。尖閣諸島の問題で日中関係はしっくりいっていないが、協力すべきことがある。他国に迷惑をかけているのを恥ずかしいと思えば、日本の技術を導入して公害対策に当たるのが、中国にとって今一番すべきことではないか。
うららかな日差しの下で眺める桜の花は、何物にも代えがたい天からの贈り物である。そのサクラは澄み切った青空の下でこそ映える。
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