梅雨に入ったと思ったら、カンカン照りの暑さが続いた。やっと雨が降り出したら今度は大雨で被害が出る。天候不順はほとんど例年のようになっている。何だかうっとうしい気分になってしまうが、政界を見ると、さらにうっとうしさが倍増する。
通常国会が終了し、7月21日投開票に向けて「参院選モード」に入った。といっても、世間の関心は高くない。なぜかといえば、政治不信が増すばかりだからだ。参院選の前哨戦といわれた先日の東京都議選は、投票率が40%台の低投票率。そうなれば組織のある政党が有利になる。自民、公明の両党は候補者が全員当選し、自公で過半数を超える圧勝だった。
対して、悲しいまで惨敗したのが民主党。43議席が15まで激減。共産党の17議席よりも下回って第4党になってしまった。3年半の民主党政権の体たらくからこの結果は予想されていたが、ここまで有権者から見放されるとは…。もう一つ、日本維新の会もわずか2議席にとどまった。橋下徹代表の慰安婦発言問題などで維新の会は逆風に見舞われている。共同代表の石原慎太郎氏との間もぎくしゃくしている。
野党がずっこけて、自民党が相対的に浮上した形だろう。このまま参院選に突入すれば、自民の大勝で念願の参院過半数を実現し、衆参のねじれ解消になりそうだ。その先に待っているのは安倍晋三首相が狙っている憲法改正である。そこまで自民に大勝させていいのだろうか。いささか心配になってくる。
自民党の憲法改正草案によれば、現行憲法で「戦力不保持」をうたった9条2項をまるまる削除。代わりに集団的自衛権の行使容認を念頭に「自衛権の発動を妨げない」としている。自衛隊を「国防軍」に変え、これまで禁止していた「海外での武力行使」も国際平和活動であれば容認する方針を明記している。
現在の憲法では、改憲の発議をするには衆参両院での3分の2以上の賛成が必要だ。安倍首相は、これを衆参両院の過半数の賛成でできるように改正しようとしている。つまり、改憲のハードルを下げようとしているのである。
何だか「きな臭い」と心配するのは、私だけではあるまい。日本が戦後、海外に軍を派遣せず、一人の外国人も殺していないのは憲法9条のおかげといってもよい。それを変えるには、もっと国民的議論が必要ではないか。今度の参院選は改憲問題を争点に議論を深めてもらいたいと願う。いささか堅い話になったが、決して人ごとではない。無関心は「悪」である。
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