参院選から1カ月たった。今年の夏は、参院選当時から猛暑が続いている。熱中症で死者が多く出るほどだ。この猛暑は日本だけでなく、地球上のあちこちで起きている。旱魃や豪雨など異常気象が頻発するのは、地球温暖化の影響だろう。
選挙後の政界は、夏休み中である。議員さんは外遊の季節で、「宴のあと」の静けさといえる。「宴のあと」といえば三島由紀夫の小説にある。都知事選に立候補して敗れる元外務大臣をモデルにし、裁判になった問題作だ。もちろん、小説のことを書くつもりはない。参院選という宴が終わり、その後がどうなるのか。「宴のあと」を懸念しているのである。
ご存知のように、参院選は予想通り自民・公明の圧勝、民主の惨敗に終わった。投票率は低く、政治不信は募るばかりといえる。前回のコラムで自民に大勝させるといろんな心配が出てくると述べたが、結局はその道を国民は選択してしまった。
野党側は民主以外に、平成維新の会、みんなの党、みどりの風など多くの党に分かれ、お互いに足の引っ張り合い。選挙後は民主、維新の会、みんなの党のいずれも内紛を起こした。野党が団結しないといけない状況の中で、逆に抗争でバラバラなのだから、どうしようもない。
自民の大勝で念願の衆参のねじれが解消された。いよいよ安倍晋三首相が狙っている憲法改正が待っている。国民が政治に無関心であればあるほど、自公政権は好きなようにできる。本丸である「憲法9条の改正」に向けて、まっしぐらという感じである。
もっとも、自民の圧勝で与党側もいささか緩みが出ている。麻生太郎副総理が「改憲はナチスの手口に学べ」と失言して、内外で大きな問題になった。発言を撤回してもそう簡単に元には戻らない。作家・歴史家の半藤一利さんが新聞のオピニオン欄で、「政治家諸公の歴史知らずのお粗末は毎度のことながら、こんどの麻生副総理発言にはいささかあぜんとした」と書いている。
小党分裂の末に一党独裁になったドイツの歴史を挙げ、「参院選が終わってつくづく思うことは、今の時代、政治とはイメージ操作だな、ということ。ナチスの宣伝相ゲッベルスが言ったように、活字よりは音声、理屈よりは印象、思考よりは気分が優先される。…歴史の教訓とは、歴史から何も学ばないこと、と誰かが言った言葉があらためてよみがえってくるのである」と。
この皮肉が、政治家や国民に応えるのだろうか。もうすぐ「宴のあと」の政治の季節がやってくる。
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