「殿ご乱心」と、安倍内閣の閣僚が言った。それに対し、脱原発を掲げて出馬した細川護煕元首相は、こう答えている。
「元首相が都知事選に出馬することはまさに前代未聞です。ましてや落選などしようものなら、とんだ恥の上塗りでしょう。親しい人に『晩節を汚す』と止められた、のはむしろ当然というべきでしょう。…ご乱心じゃなきゃこんなところに出てきたりしませんよ」。
それほど細川氏の原発に対する危機感は強いということだろう。原発問題は国政の問題で都知事選の争点にはそぐわない、という声もある。それには、「住民の生命と財産を守ることが首長の第一の任務。もし事故が起こったら、都民の生活、安全・財産は壊滅的な被害を受ける。オリンピックや消費税、TPPどころではない。すべてのものが吹き飛んでしまう」と反論する。
20年ほど前の1993年に細川内閣は誕生したが、わずか10ヵ月の短命に終わる。それも、佐川急便からの1億円献金問題を追及されて、あっさりと政権を投げ出した。
そういう過去があるだけに、冒頭の「殿ご乱心」というわけだ。「脱原発」を掲げる小泉純一郎元首相が細川氏を全面支援していることもある。原発の早期再稼働をもくろむ安倍政権にとっては、何が何でも潰してしまいたいと思っているだろう。
都知事選は、2月9日に投開票される。世論調査によると、自民、公明が支援する舛添要一元厚労相が優位に立っている。細川氏の訴えは残念ながら届きそうにないようだ。個人的には細川氏も小泉氏も好きではない。これまでも厳しく批判してきた。だが、「脱原発」の訴えに対しては、全面的に賛同する。
ブックレビューの「原発ホワイトアウト」にも書かれていたように、原発推進によって金を生み出して政官財に配る「モンスターシステム」が、この国を蝕んでいる。核のゴミを処分することもできない原発は、国の存亡にかかわる。いや、人類の存亡にもかかわると思う。
|