唐突感は否めない。衆院の解散、師走選挙のことである。安倍首相は、来年10月に予定していた消費税率10%への再増税を1年半延期し、デフレ脱却に向けた自らの経済政策「アベノミクス」の信任を問うとしている。だが、「消費税率の先延ばし」が争点になるとは思えない。今、なぜ、誰のために解散総選挙をするのか、と思いを巡らせても大義が見つからないのである。
野党はバラバラで弱体化している。安倍政権の内閣支持率はまだ高い。どう転んでも自民党が負けるはずがない、という政府与党の読みだろう。「安倍首相は、おじいちゃん(岸信介元首相)が出来なかった解散をしてみたかった」と解説する人もいる。意外とこのあたりが的を射ているのかもしれない。
来年早々、原発の再稼働が始まる。来年春以降に集団的自衛権の法制度を整備するなど、懸案事項が待っている。衆院議員の任期がまだ2年残っているのに、今なら選挙に勝てるので、長期政権への足固めをしたいという思惑が透けて見える。
それにしても、巨大与党に対抗する野党の準備不足、足並みの乱れは目を覆うばかりだ。みんなの党は解党する始末。民主党や維新の党、次世代の党、生活の党、社民党、共産党などが共闘して候補を一本化することも難しそうだ。このままでは、結局、自民党のやりたい放題になってしまうのでは、と天を仰ぎたくなる。
先日、報道ステーションを見ていたら、アフリカでナッツを製造販売する「ルワンダ・ナッツ・カンパニー」を興して成功した佐藤芳之さん(75)がゲストで出演していた。古館キャスターに解散総選挙について問われた佐藤さんは「一言でいえば、素晴らしい」とコメント。想定外のコメントに古館キャスターの目が点になった。
「アフリカでは長期独裁政権で、ずっと同じ権力者が統治している。政府の方から解散して民意を問うという日本の国民は、大変幸せな国民だ。このチャンスを生かしてほしい」と佐藤さんは続けた。目から鱗が落ちる、とはこのことだろう。大義はともかく、与えられたチャンスを無駄にすまい。イエスかノーか、安倍政権に対する一票を投じて、国民の意思を反映させよう。
|