ジャーナリズムの最も重要な役割は、「権力の監視」である。権力への批判ができない状況といえば、すぐ頭に浮かぶのは北朝鮮だ。いつの時代も独裁者は、言論弾圧で批判する人を力で抑え込もうとする。その点からいうと、報道機関にとって権力から嫌われることは、誇りと思っていいのかもしれない。
自民党の若手議員の勉強会で、出席議員や講師の作家・百田尚樹氏から報道機関に圧力をかけようとする発言が相次いだ。「沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない」「(沖縄2紙の)牙城の中で沖縄の世論はゆがんでいる」。2紙というのは琉球新報と沖縄タイムスである。辺野古基地建設に反対する「沖縄の世論」をゆがめているのではなく、沖縄県民の憤りをしっかりと報道している。それが、基地建設を進めようとしている自民党政府側にとって目障りということなのだろう。
この勉強会は、9月の党総裁選で安倍晋三首相の支援をするための会で、百田氏は首相の「お友達」だ。ということは、首相の本音を代弁したとも推測される。第2次安倍政権が発足した2012年以降、自民党の圧倒的な多数という状況の中で、安倍政権の報道規制の動きがエスカレートしている。
ところが、世の中の動きをみると、報道圧力問題に対しての批判は大きなうねりとなっていない。「マスコミは批判ばかりしている」「メディアは真実を報道していない」などメディアに対する不信感の声をよく聞く。もちろん、メディア側も信頼を得るための努力が足りないと反省すべきだろう。しかし、「メディアは」とすべてを十把ひとからげに挙げている人も多いのではないか。気が付けばものが言えない世の中になっているかもしれない。後から気付いた時はもう遅いのである。
おごる自民党。それを許しているのは、結局は国民である。琉球新報と沖縄タイムスは報道圧力問題を厳しく批判している。在日米軍基地の約74%を沖縄に押し付けてきた本土の人々は、その主張に改めて耳を傾けたい。
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