やはり、書いておきたい。世論調査で国民の6割以上が反対し、多くの憲法学者が憲法違反という安全保障関連法が、未明の国会で可決された。戦後の安保政策が大きく転換し、自衛隊の海外活動が際限なく広がる道が開けたことになる。戦後70年、平和だったこの国が変な方向に進んでいるのではないか、と不安に思っている人は多いのではないか。
憲法というものは、時の権力の暴走を規制する存在だ。ところが安倍政権は歴代政権が禁じていた集団的自衛権の行使を、憲法解釈の変更でできるようにした。まさに立憲主義をないがしろにするものである。安倍政権に対する問題点は、この欄でも何回か指摘してきた。国会で論議をすればするほど疑問点が噴出した法案を、力で押し切ってしまった。
数の力を否定しない。民主主義は最後に多数決で決めるのがルールである。確かに、自民党と公明党の連立政権は選挙で絶対的多数を擁している。だからといって、何をしてもいいということではない。集団的自衛権については、憲法の改正を国民投票に諮り、国民が認めた上で行使するのが筋だろう。
今回の安保法案の審議過程で、救いもある。これまで、政治に無関心だった多くの若者たちが、反対デモに参加して声を上げていることだ。60年安保闘争では学生デモが吹き荒れ、女子大生が死亡した。だが、最近は学生のデモは皆無になっていた。デモに参加した経験を持つ団塊の世代にとっては、今の学生たちが物足りなく見えていた。
シリアの内戦をはじめ、世界のあちこちで紛争が起きている。テロ活動も頻発している。軍事力で抑え込もうとすると、それに反発してテロで対抗しようとする。負の連鎖が続くだけである。軍事力による力だけでは、収めることはできないだろう。「政治の力」が今こそ求められている。今回のことが、これからの時代を担う若者にとって、政治に関心を持つきっかけになってほしいと願う。
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