満開のサクラが、春の嵐で散っていった。まさに「花に嵐」である。広島地方は4月7日、激しい風雨に見舞われ、満開のサクラから花のじゅうたんに変わってしまった。咲き誇った桜もいいが、ぱっと散るはかなさもまたいい。
このコラム欄で何回も書いてきたのが桜である。世界を見渡せば紛争やテロ、異常気象、拡大する貧富の格差…考えれば考えるほど鬱々としてしまう。せめて、花見で浮世のうさを忘れたい、と思うのも仕方がないだろう。
今年も、桜をめでに出かけた。まず、3月末には妻と友人夫婦の4人で島根県雲南市木次の「斐伊川堤防桜並木」を訪れた。「日本さくら名所100選」で知られる桜並木はまだ3分から5分咲きだったが、その見事さは想像を超えていた。2qに及ぶ桜のトンネルをそぞろ歩きながら、しばし至福の時間に浸った。800本の桜は樹齢80年以上の大きな老木。「桜守」が老木を保護してきた証しだろう。
4月に入って、住んでいる廿日市市の桂公園と木材港の住吉堤防敷の桜をはしごした。桂公園では平日でも花見客や幼稚園児でいっぱい。桜の大木の下、時々はらはらと花びらが散ってくる。満開の花びらを見上げながら持参した弁当をいただいた。住吉堤防敷の桜のトンネルは、ぼんぼりの灯りがついた夜桜を見物した。
サクラの花は、心をウキウキとさせるものがある。この季節、入学式、入社式もあってフレッシュな空気に包まれ、世の中が何だか明るくなる。日本人はサクラをこよなく愛しているが、最近は日本へ花見に来る外国人観光客が増えている。サクラは日本人限定ではないようだ。花見を楽しむことができるのは「平和」だということである。1人でも多くの人たちが花見を楽しむ世界になってほしいと祈らざるを得ない。
桜前線は北上する。これから北の国が次々と満開になっていく。できそうにはないが、花を追っかけて行きたいと今年も思う。
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