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広島在住のコラムニストによる “社会時評”コーナー! 月1回のペースで「読むことの楽しさ」をお届けします。

《鉄面皮》

「ケチ」というのは、よく言えば「節約家」とも言える。単なるケチならまだいい。あきれるほどの「セコさ」である。これまで「政治とカネ」の問題を追及し、「公私混同は命取り」などと著書に書いてきた。いかにも身ぎれいで正義の味方のようにふるまってきたその言葉が、ブーメランのように自分の身に帰ってきた。

そう。今、毎日のように世間をにぎわせている舛添要一都知事である。6月6日、弁護士の調査報告書が公表された。予想通り、家族同伴でのホテル宿泊費や一部の飲食費は公私混同で「不適切」と指摘されたが、「違法とはいえない」だった。「元検事」という権威を使い、「違法性はない」というお墨付きを得る儀式としか見えない。この説明に対し、普通の人なら納得できないのは当然だろう。

それにしても、東京地検特捜副部長も務めた佐々木善三弁護士はひどかった。「どんな関係者にヒアリングしたのか」という記者の質問に、「関係者は関係者」と木を鼻でくくったような答弁。ヒアリングも十分にしない「第3者の厳しい目」なんて信用できない。都知事はもちろんだが、こんな調査をする弁護士も恥ずかしくないのだろうか。

これから、都議会での追及が始まる。これだけ多くの都民から「あきれられている」のに、都知事は続投に意欲満々である。このギャップ。元宮城県知事の浅野史郎さんが都知事のことを「鉄面皮」と表現していた。これだけ非難が集まっていても、全然こたえていないのだろうか。そうならば、まさに鉄面皮としか言いようがない。

週刊新潮にこんな記事が載っていた。「首の皮一枚でつながった舛添要一都知事を褒めよ!」「暴力団『工藤会』元幹部を手玉に取った男の器量」「政治資金で『ヤフオク』美術品という質素倹約」の見出し。いわゆる“ほめ殺し”記事である。いくら批判してもこたえないのだから、おちょくるしかないか。

今回の騒動で、政治資金規正法がいかにザル法であるかが、改めて明らかになった。もう一つ。政治不信がますます強まった。国民にとって不幸なことである。

【午睡/2016.6.8】


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