記者団から何を聞かれても、怒ったような表情で、前をにらむようにして「だんまり」を決め込んだ。都議会各会派にもあいさつなし。会見もなし。何も語らず、去っていった。見送った都職員はわずか8人という寂しいお別れだった。
6月21日付けで辞任した舛添要一都知事。前日の20日、最後の登庁をした。15日に辞表を提出してから、定例会見も退任会見も開かなかった。20日に組まれていた総務委員会も中止。提出を約束していたリゾートホテルの明細や、ヤフオクで買った美術品の明細はどこかにいってしまった。全てが「うやむや」の内に幕引きになってしまった。
“けじめ”として舛添氏が言っていた「湯河原の別荘売却」や「給料を全額返上」も雲散霧消だ。辞職したら全てチャラになっていいのだろうか。政治資金の公私混同は、いわば「税金で私腹を肥やした」ことである。この公私混同は、たぶん舛添氏だけではないだろう。「ザル法」と言われる政治資金規正法を直ちに改正すべきである。だが、ザル法の方が政治家にとって都合がいいのだろう。法律を作るのは政治家だから、政治家に任せていれば抜本改正は期待できない、ということだ。
2年4カ月前の都知事選で、自民・公明両党は自民党を批判して離党した舛添氏を推薦。自民党の安倍晋三総裁や公明党の山口那津男代表は舛添氏の選挙応援を繰り広げた。勝ち馬に乗ったのである。ところが、都民だけでなく国民からブーイングを受けている舛添氏をかばっていたら参院選に影響する、と今度は斬り捨てた。その責任はいったいどうなるの、といいたい。
公私混同疑惑で大騒ぎだった舛添問題は、次の都知事選びに焦点が移っている。1300万人いる東京都のトップを選ぶ都知事選は、何といっても知名度が必要だ。そこで、候補者は「名の売れた人」が最優先される。それが連続して途中辞任という事態を招いた原因の一つだろう。同じ失敗を繰り返さないよう、人気だけでない人物を政党も有権者も選びたい。これが難しいことだが…。
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