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株式会社 廣文館
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コラム・ブックレビュー
広島在住のコラムニストによる “社会時評”コーナー! 月1回のペースで「読むことの楽しさ」をお届けします。

《誰かとどこかで》

もう、20年ほど前になる。「大長ミカン」で知られる呉市大崎下島へ向かう連絡船の中だった。永六輔さんが一人で海を眺めていた。永さんは講演のため大長へ行く途中。新聞記者だった私は新聞に連載していた「瀬戸内海を歩く」の取材だった。そして、帰りの船でまた一緒になった。

ラジオ番組の「永六輔の誰かとどこかで」をいつも聞いていたファンとして、永さんに話しかけようと思った。だが、なかなか決断がつかず、大長ミカンをおいしそうに食べている姿をずっと眺めただけで終わった。「永六輔の誰かとどこかで」は全国を旅して出会った人たちとの触れ合いを、軽妙な話術で語る長寿番組だった。船の中で話しかけたら、瀬戸内海の話題で会話の花が咲いたのではないかと、今さらながらチャンスを生かせなかった自分を反省している。

永さんは「旅する巨人」の民俗学者宮本常一を敬愛していて、出身地の山口県周防大島町を何度も訪れていた。宮本常一の資料を集めた周防大島文化交流センターの開館記念イベントで、話芸を披露する永さんを目の当たりにしたこともある。坂本九さんの「上を向いて歩こう」やジェリー藤尾さんの「遠くへ行きたい」を聞くと、いつもジンとくる。著作の「大往生」や「職人」「芸人」を読んで、その目線に共感した。

永さんの真骨頂は、ちまたの人々の声を拾い上げて、ラジオで伝え続けてきたことだろう。昭和一桁生まれで、戦争嫌いが染みついていた。最近のきな臭くなっている世の中で、憲法9条を守る訴えもしていた。旅を愛した永さんが、参院選の投開票前の7月7日、永遠に旅立った。改憲勢力が3分の2を超えた選挙結果を、どう思っているだろうか。

【午睡/2016.7.12】


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