プロ野球日本シリーズで、広島カープは日本ハムに敗れた。カープファンには残念な結果だが、緊迫したいい試合ばかりだった。日本一にはなれなくとも、今年は「カープの年」だったのではないか。マツダスタジアムだけでなく、どの球場でもスタンドを真っ赤に染める応援。「カープ女子」、「神ってる」、「男気」などの流行語も生み出した赤ヘル旋風は、社会現象と言ってもいい。
新井選手の2千本安打、黒田投手の日米通算2百勝、などなど今年は春から話題満載。そして、25年ぶりのセ・リーグ優勝。広島の街はカープの話題でもちきりとなり、いつになく明るい雰囲気に包まれた。カープの存在の大きさを、改めて感じた年だった。ファンの一人として「夢と感動をありがとう」とお礼を言いたい。
ただ、もう一つの「ヒロシマ」の方は、じくじたる思いである。国連の「核兵器禁止条約」制定交渉の開始を定めた決議案が賛成多数で採択された。「核なき世界」への着実な第一歩である。ところが、日本政府が反対票を投じたのである。「核の傘」に依存する日本は、同盟国米国の圧力に屈したわけだ。日本は核保有国の立ち位置にあるということである。あの北朝鮮でさえ、賛成票を投じているのだ。これでは、「唯一の被爆国」という看板が泣くだろう。被爆者ならずとも政府の対応にはあきれてしまう。
今年5月、オバマ米大統領が広島市を訪れ、原爆慰霊碑の前で核兵器なき世界を追求する勇気を語った。安倍晋三首相も、碑前に廃絶を誓ったばかりではないか。歴史的な現職米大統領の被爆地訪問は、いったい何だったのか。国際社会から「日本は言葉と言動が著しく違う」と厳しい声が上がるのも当然である。
そして、当事者の岸田文雄外務大臣は、被爆地である広島1区出身である。どんな理屈を述べても、白けてしまう。かなり前、当時の防衛相が「日本はアメリカの51番目の州ではないか」と皮肉っぽく言ったことがある。カープで高揚した気持ちに、冷や水をかけられた感じだ。
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