もうすぐ、2016年が終わる。先日、20歳の学生が「1年が早い」とつぶやくのを聞いて笑ってしまった。年齢を重ねると「そんなもんじゃない」と言いたくなる。50代、60代になると、年々驚くほど早くなるのを感じる。たぶん、私だけではないだろう。
なぜ年を取ると1年が早く感じるのだろう、と思って調べてみた。そうすると、「ジャネの法則」というのが見つかった。19世紀のフランスの哲学者ポール・ジャネが発案し、甥の心理学者ピエール・ジャネが紹介した法則という。「主観的に記憶される年月の長さは、年少者にはより長く、年長者にはより短く評価される」という現象を、心理学的に解明したのだそうだ。
50歳の人間にとって1年の長さは人生の50分の1だが、5歳の人間にとっては5分に1に相当する。よって、50歳の人間にとっての10年は、5歳の人間にとっての1年に当たる、ということになる。個人差はあるが、5歳のころは毎日、見るもの、触るもの、やること全てが初めての経験や出来事の連続で、ひとつひとつが強烈に心に刻まれる。一方、50歳といえば社会というものを一通り経験して、新鮮な驚きに出会う機会は一般的に目減りする。だから、年を取るに連れて1年が早く感じるというわけだ。
そんなことを考えながら、今年を振り返る。世界を見渡すと、シリアの内戦や各地で頻発するテロなど紛争の1年だった。英国のEU離脱、米国では次期大統領に暴言王のトランプ氏が当選し、先の見えないカオス(混沌)の世がますます進む。異常気象に多発する災害…。何かとてつもないことが起きるのではないか、という不安が増すばかりである。
人類の未来を考えると、悲観的になってしまう。せめて、心が温かくなる明るい話題がほしい。その点、スポーツの世界だけは少しだけ光明が見えた。リオ五輪での金メダルラッシュ、広島カープの25年ぶりのリーグ優勝、とりわけカープの活躍は広島を明るくしてくれた。来年はいい年になるように、と祈らずにはおられない。
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