「8人=36億人」。なに、これ? と、思われる方が多いのではないか。世界の超富豪8人が、世界人口の半分に当たる貧しい36億人の総資産額に匹敵する―という数字である。
8人とは、1位がマイクロソフト創設者のビルゲイツ氏(米国)で750億ドル(約8兆5000億円)、2位はZARAの創業者アマンシオ・オルテガ氏(スペイン)の670億ドル、3位がウオーレン・パフェット氏(米国)608億ドルと続く。フェイスブックの創設者であるマーク・ザッガーバーグ氏(米国)も6位に入っている。
毎年1月、世界中から政財界のリーダーが集い、世界経済の課題について議論するダボス会議が開かれる。そこで、貧困問題に取り組む非政府組織(NОG)のオックスファムが発表した報告書である。2010年の43人から2017年の8人へと格差は広がる傾向が続く。富裕層の20%が世界全体の94%を所有しているという。世界の富の格差は、まさに信じがたいほどといえる。
格差拡大の理由の一つは、富の集中によって富裕層の発言力が増し、普通の人々の声が届かないことだ。グローバル化による大規模な多国籍企業や富裕層が肥大化し経済力を背景に政治に働きかけ、金融緩和や高所得層の低課税など富裕層の権益を保護しているからだと指摘されている。多国籍企業や富裕層の一部がタックスヘイブン(租税回避地)を利用して、税金を払わないのも腹立たしい。
日本でも格差は広がっている。小泉純一郎首相時代、アメリカ型の市場主義を押し進め格差が急激に拡大した。裕福な人々はますます裕福になり、貧しい人は貧しいまま。改善どころか悪化し続けている。政治は富の再配分をするのが使命であるはずなのに、逆の方を向いている。格差の連鎖が貧しい人たちの不満を増大させ、治安の悪化やテロを引き起こす要因にもなっている。
昨年、大きな話題となったピケティ教授の「21世紀の資本」では、データを基に資本主義は一般的に格差拡大を生むことが論じられている。資本主義の限界が今、顕著になってきている。トランプ米大統領の出現と騒動はその象徴かもしれない。
|