半世紀前の古い話になるが、私は一年間、「広島英数学館」という大学予備校に通ったことがある。この英数学館は、今話題の加計学園が経営している。加計学園は岡山理科大や千葉科学大など多くの学園を抱える一大教育グループになっている。
学園の創設者は加計勉氏。「加計」の名前は、広島県加計町の出自からという。勉氏の跡を継いだのが、安倍晋三首相の“腹心の友”である孝太郎氏だ。その加計学園が愛媛県今治市に新設を計画している獣医学部を巡って、「安倍首相の意向が働いたのではないか」と問題になっているのである。
政府の国家戦略特区制度を活用した獣医学部の新設だが、「加計学園ありきで事が進んだ」と野党側から厳しく追及されている。「総理の意向」を含む文書も見つかったが、菅官房長官は当初「怪文書」と一蹴。ところが、文部科学省の前川喜平前事務次官が「文書は本物」と証言して衝撃を与えた。それでも、菅官房長官は気色ばんで文書は信用できないと否定し、前川前次官が「出会い系バーに出入りしていた」と個人攻撃までしたのだ。いささか醜悪に見えたのは私だけではないだろう。
文科省は、文書に調査をしたが「確認できなかった」とする。前川氏は「あるものをないとは言えない」とし、さらに和泉首相補佐官や木曽元内閣官房参与の関与を証言した。どうみても、政府側が「都合が悪いので証拠隠しをしている」としか思えない。国有地が安く払い下げられた森友学園問題も、同じような構図である。交渉記録は「廃棄した」という財務省の答弁。都合が悪くなると、「破棄した」とか「確認できない」と証拠を隠滅するのは官僚の常とう手段だ。
官僚の人事権を握っている内閣の権力拡大で、官僚は政権の顔色ばかりうかがう図式になっている。首相が指示しなくても、周りの側近や官僚たちが「忖度」した結果が、森友学園や加計学園問題を招いたのだろう。
大臣の失言も含めて次々と疑惑が噴出しているのに、内閣支持率があまり下がらないのだから、安倍政権のやり放題である。自民一強の政界をこの欄で取り上げ、「権力は腐敗する」と指摘したことがある。まさに、その状態と言わざるを得ない。梅雨入りはまだだが、こころは土砂降りの梅雨空である。
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