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コラム・ブックレビュー
広島在住のコラムニストによる “社会時評”コーナー! 月1回のペースで「読むことの楽しさ」をお届けします。

《歴史的な惨敗》

初めに言っておきたい。私は、小池百合子都知事の支持者ではない。だが、東京都議選で自民党が歴史的な惨敗を喫したことを、よかったと思っている。自民党の安倍一強による「おごり」にノーを突き付けた、都民のバランス感覚に拍手したい。

森友学園、加計学園問題や「共謀罪」の強行採決、さらに都議選応援で「自衛隊としてお願いしたい」とした稲田朋美防衛相の失言、豊田真由子議員の暴言や自民党都連の下村博文会長の献金疑惑など自民党への逆風が重なった。「自分がまいた種」だから当然の帰結だろう。

自民党が議席を減らすことは想像できたが、ここまで惨敗するとは、という感じである。それにしても、「都民ファーストの会」を率いる小池旋風はすごかった。2005年の小泉純一郎首相(当時)が行った郵政選挙を思い出す。小泉旋風が吹き荒れて、街頭演説会場は熱気に包まれたものだ。小池知事の「自民党を敵に見立てて改革を進める」というやり方が、小泉劇場を再現しているようだった。

さて、この都議選の結果が、安倍一強政治の潮目になるのかどうか。「奢るもの久しからず」と昔から言われる。内閣支持率がこれまで下がらなかったのは、安倍政権を積極的に支持していたからではない。「ほかに代わる政党がない」という消極的支持が多かったともいえる。つまり、受け皿があれば、批判票はそちらに流れるのである。国政の方も、自民党に代わることのできる健全な野党が育たないと、この国の政治はゆがめられてしまう。

ところで、最初に言った通り、小池知事が好きでも嫌いでもない。むしろ、小池都政にいささか不安を感じている。大量に生まれた新人議員集団だけに、今後が心配である。期待が大きければ、うまくいかない時の失望も大きい。今回の大勝利は風頼り。それだけに、本当に東京大改革が実現しないと、あっという間に逆風に代わることを忘れないでほしい。とにもかくにも、「土砂降りの梅雨空」が、しばし「梅雨の晴れ間」になったという思いをかみしめている。

【午睡/2017.7.3】


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