もう、20年以上前になる。「窓ぎわのトットちゃん」を読んで、感動したのを記憶している。女優・タレントの黒柳徹子さんの自伝的物語である。歴代ベストセラー第1位の580万部というのも、うなずける作品だ。
最近、改めて「窓ぎわのトットちゃん」を図書館から借りて読んだ。というのも、テレ朝系の昼番組で「トットちゃん」が放映されていたからだ。徹子さんの半生を描いたものだが、これがなかなかよかった。とりわけ、小さいころの話が素晴らしかった。小学校に入学したトットちゃん(徹子さん)は、あまりにも「自由奔放で手に負えない」と退学させられて、「トモエ学園」に転校する。そこで、小林宗作校長と出会ったのがトットちゃんにとって幸運だった。
初めて学校に来た日、小林先生はトットちゃんの話を4時間も聞いてくれた。全校生50人の幼小一貫校のトモエ学園で、トットちゃんはのびのびと学ぶ。小林先生は、日本のリトミック研究者で幼児教育研究家だった。大正デモクラシー時代、幼児教育において音楽教育の基礎をきちんと行うことの大切さに気付き、自然の中のリズムを見つける「総合リズム教育」を実践した。その教育方針が素晴らしい。
「どんな子も、生まれた時には、いい性質をもっている。それが大きくなる間に、いろいろな周りの環境とか、大人たちの影響でスポイルされてしまう。だから、早く、この『いい性質』を見つけて、それを伸ばしていき、個性ある人間にしていこう」
徹子さんは、こう振り返る。「小林先生に出会わなかったら、私は恐らく何をしても『悪い子』というレッテルを貼られ、コンプレックスにとらわれ、どうしていいか分からないまま大人になっていたと思う」。小林先生は問題を起こしがちなトットちゃんに「君は、本当はいい子なんだよ」と言い続けた。徹子さんは「この言葉がどんなに私の心を支えてくれたか、計り知れない」という。
トットちゃんと小林先生、トモエ学園のお友達との生き生きした触れ合いは、「窓ぎわのトットちゃん」を読んでほしい。あなたも、きっと感動するだろう。それにしても、人生で素晴らしい先生と出会うことの大切さを痛感する。
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