NHKの「映像の世紀」シリーズは優れたドキュメンタリー作品だ。最近、「映像の世紀」プレミアムの「3人の“狂気”」を見た。3人とは、ムッソリーニ、ヒトラー、スターリンである。こんな映像が残っているのか、と思いながら、3人をめぐる映像の圧倒的な迫力に見入ってしまった。
ムッソリーニはファシズムを象徴するイタリアの独裁者。ドイツのヒトラーと提携し、第2次世界大戦へ突入していく。ムッソリーニとヒトラーのアジ演説と、それを熱狂的に支持する人民群衆の姿を見ていると、背筋が寒くなる。人民を扇動し、政敵を粛清して権力を握り、そして独裁者となっていく過程が映像に映し出される。ヒトラーのユダヤ人大虐殺も冷静になって考えれば信じられないことだが、独裁者と人民の“狂気”の中で、それが現実となる。
スターリンはレーニンの後継者トロッキーを片付けてから、政敵を次から次へと粛清していく。シベリア流刑、強制収容送りなどで、虐殺者の数は200万人から2000万人とも言われる。正確かどうかは分からないが、「世界の虐殺者ランキング」のベスト3を見ると、トップが毛沢東で6000万人、次いでスターリンの2000万人、3位がヒトラーの1100万人、とある。ちなみに4位がポルポトの300万人という。
3人の独裁者は、混乱する時代の中で生まれた。あれから7、80年経つが、カオスの時代といわれる現代も独裁者が次々と生まれている。北朝鮮の金正恩委員長をはじめ、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平主席、米国のトランプ大統領も変種の独裁者だろう。ほかにも、トルコのエルドアン大統領など枚挙にいとまがない。混乱した時代は強い指導者を求める、ということが背景にある。
他国だけではない。日本も自民党1強の中で安倍政権も独裁的な様相をきたしている。それは、批判勢力を力で抑え込もうとする姿勢に表れている、といえる。そして、困ったことにその1強を支えるのが、冷静な目を失いがちな国民であることだ。世界も日本もうすら寒い状況になってきている、と思う。この欄で言ってきた格言をもう一度強調したい。「権力は腐敗する。絶対権力は絶対腐敗する」。
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