衝撃的な演説に、心が揺さぶられた。
「あなたたちは空っぽの言葉で、私の夢と子ども時代を奪い去った」「私たちは絶滅に差し掛かっているのに、あなたたちが話すのは金のことと永遠の経済成長というおとぎ話だけ。何ということだ」
ニューヨークの国連本部で開かれた「気候行動サミット」で、将来を担う世代を代表して演説したスウェーデンのグレタ・トゥンベリさん(16)の言葉である。そして、「あなたたちには失望した。若者たちはあなたたちの裏切り行為に気付き始めている。全ての未来世代の目はあなたたちに注がれている。私たちを失望させる選択をすれば、決して許さない」と訴えた。
気候変動サミットでは、地球温暖化対策を求める若者の抗議行動などを背景に、対策強化を表明する国が相次いだ。全ての国が温室効果ガスの排出削減に取り組むことを定めた国際的枠組み「パリ協定」が2020年に本格始動する。ところが、トランプ大統領の米国はパリ協定から離脱する方針のほか、サミットで目標を実現する具体策を示さなかった国も多い。
日本は初外遊の小泉進次郎環境相が出席した。だが、石炭火力発電を重視する日本の実情に、世界の環境団体は「『手ぶら』でサミットに参加した」と手厳しい。小泉環境相が、トゥンベリさんの演説をどこまで真摯に受け止めたのか、これからの環境行政が問われている。かっこいいスピーチより、具体的な行動が必要なのだ。
世界では温暖化関連で指摘される異常気象が多発している。太平洋の島国ツバルは、海面上昇で水没の危機に脅かされている。アフリカのモザンビークなどはたびたびサイクロンに襲われている。日本でも毎年のように豪雨災害に見舞われている。異常気象や自然災害は、温暖化の進行で一層ひどくなるだろう。
前回のコラムで、「人類は破滅の道に向かっている…夏の終わりに、そんなことを思ってため息をついている」と書いたばかり。トゥンベリさんの演説を聞いて、救われた気持ちになった。居並ぶ世界のリーダーに、解決への責任を果たすよう求めたトゥンベリさんの言葉を無駄にしては許さない。
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