安倍晋三首相の在任期間が、11月20日で計2887日となり、最長の桂太郎を超える。2887日というのは8年近いのだから、本当に長い。しかも、任期は東京五輪の翌年、2021年まであるので、まだまだ最長記録は伸びる。
過去の長期政権を振り返ると、桂太郎は日露戦争で日本を勝利に導き、3位となる安倍首相の大叔父・佐藤栄作は、沖縄返還を実現した。4位は日清戦争に勝った伊藤博文、5位はサンフランシスコ講和条約を結び戦後復興の枠組みをつくった吉田茂。そうそうたる歴代首相と比べるのは酷だが、安倍首相にはこれといった政治的遺産はまだない。北方領土や日本人拉致問題の解決は全く見通しが立たない状態で、今のところ「ただ長いだけ」と言わざるを得ない。
それどころか、森友学園や加計学園問題での疑惑や不祥事は、うやむやにしたままほおっかむり。最近では、閣僚2人が公選法違反の疑いで相次いで辞任したが、「任命責任は自分にある」というだけで何の責任も取らない。毎年春に公費で開かれる首相主催の「桜を見る会」に、首相の地元後援会関係者が多数招かれた「利益誘導」の疑いも浮上している。
自民一強、安倍一強のおごりは目に余る。それに、あまりにひどいのは、国会審議での安倍首相の「ヤジ」だ。参院予算委で松尾秀哉議員(立憲民主党)が表現の自由について質問中、安倍首相が「共産党!」とヤジ。松尾議員は「何が共産党なんだ。私は共産党ではありません」と激怒。審議がストップした。ジャーナリストの青木理氏は「現実の共産党を指しているわけではなくて、『アカ』と同様の差別語。ネトウヨ的で非常に低劣」とあきれる。首相のヤジは今年だけ20回を超える。救いがないのは、本人がヤジを恥ずかしいと思っていないことである。
以前、農水大臣が砂糖の業界団体「精糖工業会」が入居する「精糖工業会館」から100万円の寄付を受けた問題で、野党議員が質問中に安倍首相が「日教組、日教組」とヤジを飛ばした。日教組は全く関係ないのに、日教組が野党議員にお金を寄付しているとかのようなヤジだった。事実誤認のうえに、まるで子どもみたいな品性のないヤジだ。野党側もヤジを飛ばしているのだから、という声もある。だが、発言できる立場にある首相と、同列ではないだろう。
首相は、国民が選挙で選んだ国会議員によって選ばれる。つまり、国民が選んだわけだ。こんなお粗末な首相が、憲政史上最長を記録するのだから、国民のひとりとして恥じ入るばかりである。
|