通常国会が20日から始まった。政治とカネを巡る疑惑で国会を欠席していた自民党の河井克行前法相(衆院広島3区)と妻案里氏(参院広島)の2人が、3か月ぶりに姿を見せた。「関係者に迷惑を掛けて申し訳ない」と謝罪はしたが、相変わらず何の説もしないまま。まさに、「厚顔無恥」としか言いようがない。
克行氏は9月に法相に就任したが、案里氏の公選法違反容疑(買収)を受けて、3か月で辞任。その時、「説明責任を果たす」と言ったきり雲隠れしていた。広島地検に家宅捜索された15日深夜、2人とも突然出てきてそれぞれ取材に応じた。しかし、2人とも「捜査への支障」を理由に説明を避け、議員辞職や離党も明確に否定した。法律の専門家は、説明をしても何ら捜査に支障はない、と断言する。「捜査中」を盾に事実関係を明かさなかったやり方が、2人の品性を表しているように見える。
こんな姿勢に与野党とも不満が広がっているだけでなく、地元では辞任を求める声も上がっている。説明責任を求めるのは当然だが、「安倍首相自身が『森友・加計学園問題』や、首相主催の『桜を見る会』で説明責任を果たしていない」という厳しい指摘がある。安倍政権が「説明責任」と言っても、ちゃんちゃらおかしいと言わざるを得ない。
昨年7月の参院選広島選挙区で、案里氏は官邸主導で擁立が決まった。安倍首相や菅官房長官らが度々広島に駆け付け、街頭演説で案里氏を強力に応援したのを思い出す。克行氏が菅官房長官と当選同期で、安倍首相の側近ということもあり、他陣営が「過去に例がない」と口をそろえる過熱ぶりだった。そのせいもあり、自民現職の溝手顕正氏が落選した。
いうまでもなく、議員を選んだのは有権者だ。時の政権も、間接的ではあるが国民が選んだのである。不祥事を起こしても、疑惑があっても頬かむりして責任をとらず、「時がたてばそのうち忘れるだろう」と国民を見くびっているのも、自民一強の現状があるからだ。与野党の勢力が拮抗していれば、こんなことにはならないだろう。小選挙区制という選挙制度の問題はあるが、「有権者よ目覚めよ」といいたい。
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