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広島在住のコラムニストによる “社会時評”コーナー! 月1回のペースで「読むことの楽しさ」をお届けします。

《ずぶずぶな関係》

「ずぶずぶな関係」。何ともイヤな響きを持つ言葉である。だが、菅義偉首相の長男・正剛氏が勤める放送事業会社「東北新社」による総務省幹部の接待漬けを表現すると、この言葉がぴったりくる。

公務員が利害関係者と会食をしてはいけない、というのは基本の倫理である。政権は、長男らと会食を共にした総務審議官ら11人の大量処分に踏み切った。だが、身内による「お手盛り調査」で政権が幕引きを図ろうという思惑がみえみえだ。政府側は「行政のゆがみ」を否定するが、下心がなければ誰が高い飯をおごるというのだろうか。
背景には、人事権を駆使して官僚を支配し、「異を唱える者は異動させる」と公言する菅首相に官僚が「忖度」したという構図である。

問題発覚当初、首相は「私と長男は別人格」とし、官僚側も「会食はしたが衛星放送に関する話はなかった」というシナリオで逃げ切りを図った。ところが、第一報を報じた週刊文春が会食時の音声データを公開する「第2弾」で目論見が破綻した。証拠がなければ「記憶がない」でごまかそうとする姿勢は、「姑息」であり「人間としていやしい」と言わざるを得ない。

おまけに、首相が抜てきした山田真貴子広報官が総務省時代に1回7万円を超える高額接待を受けていたことも判明。「飲み会を絶対断らない女」を自負するのは勝手だが、「飲み代ぐらいは自分で払え」と突っ込みたくなる。ごひいきの山田氏は首相会見を仕切り、記者の質問を制限することに手腕を発揮している。辞任はしないとのことだが、このまま広報官として会見が仕切れると本当に考えているのだろうか。

今回の接待問題は、安倍前首相の「モリ・カケ疑惑」と同じ構図である。安倍、菅と続く長期政権の「ひずみ」と「おごり」と「ゆるみ」を感じる。首相が掲げている「既得権益の打破」が白々しい。前回のコラムで、菅首相を「総理の器ではない」とまで言及した。長男の接待漬け問題で、その感をますます強くした。それにしても、疑惑を暴くメディアが最近は週刊誌ばかりだ。権力をチェックする役割を担っているはずの新聞は、いったいどうなっているのか。新聞記者の奮起を促したい。

【午睡/2021.2.26】


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