菅義偉首相が自民党総裁選に不出馬を表明し、総裁選に向けて党内の動きがあわただしくなっている。昨年９月に誕生した菅政権は約１年で終わる。コロナ対策が後手後手に回り、国民からの信頼を失ってしまっただけに、退場もやむをえないだろう。

戦後最大の国難といわれるコロナ禍の中で、安倍前政権もひどかったが、それ以上に菅政権は対応を誤って感染拡大を招いた。医療体制の崩壊、ワクチン供給も間に合わず、無為無策によって多くの命が失われた。戦後の首相の中で、最悪・最低の首相として名を残すかもしれない。

安倍前首相は、何か問題が起きると「責任を痛感している」とはいうが、責任は一切取らなかった。「国民の皆さまに丁寧に説明する」といいながら、一度たりともそれを実行しなかった。国会軽視どころか自ら招いたモリ・カケ疑惑などの追及されると　、論点をずらしてまともに答えなかった。それどころか、結果的にみると平気でウソをつき、証拠を改ざんさせることまでやった。

菅首相になると、「ボキャ貧」で説明する言葉さえ持っていない。事前に用意した紙を読み上げるだけで、それさえも肝心のところを読み飛ばしてしまう失態も。コロナが感染拡大する中で、東京五輪を強行した理由を聞かれると「安全安心な開催」を念仏のように繰り返すだけだった。国民に自粛をお願いする以上、国民を納得させる説明を自分の言葉で語らなければ、国民の心に伝わるわけがない。

人事を握り、強権的な手法で頂点までのし上がってきた人のようで、日本の国をどうしたいかという国家観も歴史観も語れない。官房長官としては有能だったかもしれないが、しょせん「首相の器」でなかったということだ。こんなリーダーを持つと国民は不幸だ、という証明になった。

任期途中でやめた安倍政権と、その残りの任期を引き継いだ菅政権。合わせて９年近い自民党の長期政権は、官邸が官僚の人事権を掌握して「政治を私物化し、国民に政治をあきらめさせた」として、歴史に刻まれるだろう。ないものねだりのようだが、真のリーダーを選んでほしい。