21世紀にかくも大規模な戦争が起こるとは、誰が想像したであろうか。内戦ではない、ロシアのウクライナ侵攻である。ロシア軍は短期制圧がうまくいかないのに業を煮やして、学校や病院にも無差別攻撃を加え、子どもや老人までが死亡している。
独裁者、ウラジミール・プーチン大統領は、まさに常軌を逸している。このジェノサイド(集団虐殺)を誰も止めることができないとは。ロシア国内では情報統制が敷かれ、この戦争を「特殊作戦」とプロパガンダしている。ネットの時代に、それを多くのロシア国民が信じてプーチン大統領を支持しているというのだ。もっとも、反論すれば刑務所行きになる恐怖から、口を閉ざしている人もいるだろう。
モスクワで働く60代のロシア人女性が、心の叫びを日本人に託した手記が新聞に掲載されていた。「ロシア人なら誰でも、ウクライナに友人や親戚がいます。(略)。私たちはウクライナの味方だ、ロシアの味方ではないと証明しようとしている。(略)。私たちみんなの考えでは、プーチンはウクライナばかりでなく、ロシアも殺した。精神的にも、経済の上でも」
ロシア軍の砲撃を受けるウクライナ市街や、300万人を超える避難者の映像を連日テレビで見て胸が痛み、暗澹たる気持ちになる。プーチンは“殺戮者”として歴史上に名を残すだろう。この欄でも再三紹介した言葉がある。「権力は腐敗する。絶対権力は絶対腐敗する」。独裁者は都合のいい情報しか入らなくなり、「裸の王様」になっていく。人間って、何と愚かなんだろう。
世界には、現在でも50ほどの独裁国家がある。ロシアだけでなく、ベラルーシや北朝鮮、中国などなど。民主主義国家が必ずしもうまくいっているわけではない。独裁国家の中にも、国民の幸福を実現している国も一部ある。だが、多くの独裁国家では、国民が自由のものも言えない圧政に苦しんでいる。
振り返れば日本だって、戦前・戦中は「戦争反対」と軍にあらがえば、「非国民」として逮捕された歴史がある。改めて、他人事ではないと肝に銘じたい。
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