岸田政権が袋小路に陥っている。発足して2年3カ月、報道各社の世論調査で内閣支持率は軒並み20%台にまで落ち込み、下げ止まらない。子育てや防衛費増強にる国民の負担感から「増税メガネ」とネット上で揶揄された岸田首相。減税を盛り込んだ経済対策も「選挙目当て」と見透かされてしまい、政権浮揚の切り札との期待は裏目に出てしまった。
政務三役の不祥事による相次ぐ辞任、さらに自民党5派閥に「政治とカネ」問題も浮上。首相は、来春の大幅賃上げと経済の好循環を実現できれば、国民の支持が取り戻せると思っているのだろうか。身内の世耕弘成自民党参院幹事長からも参院本会議で、「リーダーとしての姿を示せていない」と痛烈に批判される始末。「財務省のいいなり」とも公然と言われるようになっている。
来年9月の首相任期を前に、解散を打って出て政権地盤を確固たるものにしようという目論見だった。ところが、内閣支持率の低下で解散を断念せざるを得なかった。政権の末期症状にも見えるだけに、これから「ポスト岸田」の声は一気に大きくなりそうだ。
岸田首相は人間的には「いい人」だが、当初から「政治家として何をやりたいのか」が見えていない。政権のキャッチフレーズ「新しい資本主義」も、今もって分からない。中身のない空箱といわれても仕方がなかろう。首相になりたいだけの人、かつ首相でいたいだけの人、という皮肉も聞かれる。
イギリスのサッチャー元首相は、「将来のためを思えば、不人気なことをしなければならないこともある」と増税もいとわなかった。 「鉄の女」とも言われた彼女が、現在も評価されるのはその政治家としての決断力である。
日本の政治家、いや政治屋の多くが、この国の未来を担う世代のことを思う気持ちは微塵もなく、
あるのは自身がいかに当選するか、になっていないか。岸田首相に望みたい。この国の10年、20年先を見据えた増税がどうしても必要だ、という信念があるならば、「増税メガネ」と揶揄されてもひるむことはない。自ら信ずるところを自らの言葉で語る姿勢を貫いてもらいたい。そこまでの信念がないのなら、即刻退場するしかない。
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