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広島在住のコラムニストによる “社会時評”コーナー! 月1回のペースで「読むことの楽しさ」をお届けします。

《壊れゆく時代》

元旦から波乱の幕開けである。最大震度7を観測した能登半島地震と、羽田空港で日航機が海上保安庁の航空機と衝突して炎上する事故が起きた。激動の一年が始まった、と思われた方が多いのではないか。

昨年はイスラエルでイスラム組織ハマスの攻撃が発端となって、イスラエル軍のガザに侵攻する中東戦争が勃発した。ロシアのウクライナ侵攻は、まもなく2年になろうとしている。このほかにも、世界のあちこちで紛争が繰り返されて、多くの無垢な人々が犠牲となっている。

テレビ番組のタイトルに「壊れゆく時代」とあった。イスラエルがパレスチナ自治区に設けた高い壁、ロシア国境に設けたフィンランドの壁、アメリカがメキシコ国境に築いた壁。冷戦を象徴するベルリンの壁が崩壊した1989年から35年、再び分断の壁が増えようとしている。民族間の紛争、差が大きくなる一方の富裕層と貧困層のいさかい、差別と憎しみの連鎖…。人間って何と傲慢で愚かな生き物だろう、とため息が出るばかりだ。

グローバル時代になり、経済的には世界中が深くつながる状態だが、政治的には国家間の分断が進む。ロシアのプーチン大統領、北朝鮮の金正恩委員長、中国の習近平国家主席…といった独裁国家が増え、「民主主義の危機」とも「民主主義の崩壊」ともいわれる時代になった。さらに、地球温暖化による気候変動で、世界中で洪水や干害などの災害が頻発する。

世界で一番読まれている書物といえば、「聖書」だろう。聖書には多くの予言が記されていて、「予言の書」とも言える。その中に、「主の日は盗人のごとく来らん、その日は天にとどろきて去り、もろもろの天體(てんたい)は焼け崩れ、地とその中にある工(わざ)とは焼け尽きん。」(ペテロ後書第3章10節)とある。世の終わりは火にて滅びるとの予言である。

地球の歴史は46億年。その中で、人類の歴史はほんの点でしかないほど短い。それなのに、人類は滅亡の道へまっしぐらに進んでいる。現在、世界の核弾頭は1万2千余ある。人類を何回も全滅させる量だ。プーチン大統領は核兵器を「必要に応じて使う」と発言し、核戦争の脅威が高まっている。決して架空の話ではないのが怖い。核戦争が起きれば、まさに人類は聖書の予言のように「火にて滅びる」状況になるだろう。

年の初めから、こんなことを考えなければならないのは不幸なことだ。世界の人々に訴えたい。「このままでは人類は滅びる」と。いまこそ、人間の叡智で平和な世界を取り戻してほしい、と祈らざるを得ない。

【午睡/2024.01.15】


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