見苦しいというか、あきれるというか。派閥の裏金問題を巡る自民党の対応に、国民の多くがそう感じていることだろう。
とりわけ、最大派閥の安倍派に所属していた議員の、およそ100人のうち90人が政治資金パーティーのキックバックを受けていた。その金額は5年間で6・8億円。“異次元の裏金”だった。それでも、安倍派幹部の記者会見では「キックバックは会長や会計責任者がやり取りする案件だった」と知らぬ存ぜぬをきめこんだ。会長を務めた安倍元首相と細田博之前衆院議長は既に亡くなっていて、まさに「死人に口なし」だ。
「秘書にまかせていた」といつもの自己保身で逃げ切ろうとしている政治家たち。岸田文雄首相は、突然に岸田派の解散を打ち上げ、安倍派や二階派も解散した。首相は派閥解消で政治の信頼回復につなげたいとする。だが、派閥を解消したからといって、問題が解決するわけではない。裏金が何に使われたのか、真相と原因を明らかにして、裏金に関与した議員は責任をとるべきであろう。
政治を少しでもよくするために企業献金をなくしよう、という趣旨で始めた国民の税金による政党助成金は年間約300億円。ところが、いまだに企業献金はなくなっていない。今回の裏金問題での政治家たちのていたらくに、政治不信はますます高まるだろう。それでなくても、最近の選挙では投票率が低いのに、ますます投票率が下がるだろう。
だが、こんな政治家を選んだのは誰なのか。回り回って責任の根本は国民に戻ってくる。「だれに投票しても政治は変わらない」とあきらめたら、一番喜ぶのは今回、無責任を決め込んだ自民党の政治家たちであろう。政党助成金まで出している国民が、なぜもっと怒らないのか。
日本の選挙制度である小選挙区は、政権交代を想定した制度である。1度、民主党による政権交代があったが、民主党政権の失政で再び自民党政権に戻った過去がある。そのトラウマが自民党の長期政権になっている。「野党がだらしないから」という声は当然ある。だが、自民党にお灸をすえてみてはどうだろう。野党が頼りないのはわかるが、もう1回、政権交代させてみぐらいの荒療治がないと、この国はどうしょうもない。
次の選挙では投票にいって、自らの1票で政治を変えよう。
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