「もしトラ」という言葉が最近よく使われる。米大統領選で「もしトランプ前大統領が再び返り咲いたら」を略した言葉だ。
この言葉は、ダイヤモンド社発行のベストセラー「もしもドナルド・トランプが大統領になったら」のタイトルをもじったものである。2016年のこと、当時、民主党のヒラリー・クリントン氏と共和党のトランプ氏が大統領の座を争っていた。下馬評を覆して大統領に当選したのは、ご存じのようにトランプ氏だった。
トランプ政権の4年間、トランプ氏は米国第一主義の下に、同盟無視の姿勢で保護主義の政策を乱発。予測できない奔放な言動で世界情勢を混乱の中に陥れた。何よりも、言動があまりにも下品だ。トランプ氏は議会襲撃など4つの刑事事件で起訴されるなど、さまざまな裁判を抱えている。それでも、トランプ氏を支持するアメリカ国民が信じられない、と思うのは私だけではないだろう。
今年の11月に行われる米大統領選の予備選挙で、共和党の候補はトランプ氏が独走状態。民主党の候補は、トランプ氏より高齢である現職のバイデン氏になりそうで、「もしトラ」から、「ほぼトラ(ほぼトランプ)」になりそうな状況である。なぜ、もっと若くて魅力ある候補が出てこないのか、歯がゆいばかりである。
トランプ氏が再選された時、世界はどうなるのか。さまざまなシナリオによれば、途方もないリスクが予測されている。前回以上に強権的な姿勢が目立つ政権になるのは必至だろう。その中でも特筆すべきことは、ウクライナ戦争である。トランプ氏は「相応の資金を負担しないNATO加盟国に対しては、ロシアに好きにするように言う」と、ロシアに有利になるような発言をしている。米国がウクライナ支援をやめれば、ウクライナはもたないだろう。ロシアの独裁者プーチン大統領の思うつぼになってしまう。
トランプ流アメリカ・ファーストの外交政策が復活すれば、今でも莫大なコストを負担している日本だが、さらなる負担を求めらるのは目に見えている。防衛費の大幅増強を求められれば、日本経済にとっても大きな負担になる。「アメリカ・ファーストというより、トランプ・ファーストはもうごめんこうむりたい」と祈るような気持ちで、大統領選を見つめている。
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