予想通り、と言っていいだろう。4月28日に投開票された衆院3補欠選挙は、自民党が全敗した。
唯一、与野党対決となった島根1区で立憲民主党の候補が、自民党の候補に圧勝。「自民王国」と呼ばれてきた島根県の小選挙区で自民党が敗北したのだから、自民党への逆風は半端でなかったということである。
敗因の一番は、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件への生ぬるい対応である。もちろん、それだけではない。物価高や人口減少、地方の疲弊などの対策に、自民党政治が機能不全になっていることだ。
7年8カ月に及ぶ長期政権の安倍政権時代に、権力の私物化と指摘された「森友・加計問題」「桜を見る会問題」などの問題が次々と噴出した。まさに、民主主義をゆがめる弊害である。「安倍一強体制」は、「弱い野党」に助けられた側面はあるが、何をしても政権基盤は揺るがないという自民党の傲慢さの表れだ。「国民をなめ切っている」と言ってもいいだろう。
強権的な手法が目立った安倍政権に対し、「聞く力」を掲げた岸田政権にそれなりの期待をした。だが、残念ながらその期待はどんどん失望に変わっていった。国会の質疑では、最初のうちは穏やかに丁寧に答えて好感を覚えたが、時がたつにつれて口先だけの答弁ではないかと思うようになってきた。
少子化対策では「異次元の対策」、政治資金や裏金問題では信頼回復に向けて「火の玉になって自民党の先端に立って取り組んでいく」とそれぞれ意欲を示した。ところが、勇ましい言葉とは裏腹に、後ろ向きな姿勢が目立つ。「火の玉」という言葉が恥ずかしい感じだ。安倍元首相と比べれば岸田首相は「いい人」だとは思う。だが、リーダーとしてだけでなく政治家としての資質が欠けていると思わざるを得ない。
今回の補選結果を見て、「岸田首相で選挙は戦えない」と多くの自民党議員は思ったはずだ。総裁選は9月。岸田総裁はまさに崖っぷちである。だが、これだけの逆風であるにもかかわらず、当の岸田首相は政権維持への気力を失っていないという。深刻な表情はうかがえない感じなのはいったいなぜだろう。
「何だか不思議な人」だから、国会の会期が終わる6月に「破れかぶれ解散」ということもありうる。そして、自民党が大敗し、政権交代があるかもしれない。そんなことを夢想する今日このごろである。
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