韓国の尹大統領が4日に突然、「非常戒厳」を宣言し、6時間後に解除するという事態から混乱が続いている。尹大統領がなぜ戒厳令発令という暴挙に出たのか。状況が少しずつ明らかになっているが、その一つの要因として、4月の総選挙で与党が大敗して少数与党になり、政権運営が思うようにならなくなったという点が挙げられる。
わが国も、9月の総選挙で自民党が議席を大幅に減らし、自公政権が過半数割れになった。この欄で、政権交代を呼びかけたが、野党が一本化できずに石破政権が続くことになった。政権交代は実現しなかったが、少数与党による政権運営で国会は変わってきている。
数の論理で与党の思うままになり、結局、野党は反対するばかり、というのがこれまでの状況だった。最終的には「強行採決」で決まるという場面も多々あった。ところが、少数与党では野党側が団結すれば予算案も通らない。当然のごとく、政権側が妥協せざるを得ない。総選挙で7議席から28議席に躍進した国民民主党を何とか取り込もうと、「103万円の壁」を引き上げる国民民主党の要求を飲むことになったのも、変化の一面である。
自民党の議席減の要因になった裏金問題でも、政治資金改正法の見直し論議でも野党側の攻勢で石破政権は防戦一方になっている。少数与党になったことで、「これまで形骸化していた国会議論が活発になった」と歓迎する声がある。一方で、「物事が決まらずに国政が停滞する」と危惧する声もある。「民主主義は時間がかかるものだ。独裁政治よりはいい」と私は思う。
政治資金改正法の見直し問題では、野党が反対する企業・団体献金を自民党は死守する姿勢だ。国民の税金を投入している政党交付金は、企業献金を廃止するのが前提であったはずだ。ところが、相変わらず、企業献金は続いている。これでは“詐欺”と言っても良い。以前、この欄で「企業献金を続けるなら政党交付金を廃止すべき」と書いたが、少数与党になったこの際、企業献金を廃止するチャンスではないか。
少数与党で国会は多少混乱し、政治が多少停滞することもあるだろう。だが、国会が本来の姿である議論の場になり、与野党が知恵を出し合って、少しでも政治の世界がいい方向に向かってもらいたいと願う。
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